発表概要
企画趣旨
海外に住む子ども達にも、国内のスクールカウンセラー(以下、SC)のような心の健康のサポートを提供したいとの思いから、With Kidsが活動を始めて17年が経った。
海外で働く日本人の増加に伴い、海外に住む日本人の子ども達も増加している。日本とは異なる文化、言語に囲まれた生活への適応には苦労を要するが、当然子どもも同様である。しかし海外では、子どもの心の健康や発達、子育てについて日本語で相談できる専門家を見つけることは難しいのが現状である。国内の公立小・中学校にはSCの全校配置が進められ、更には高等学校にも配置されつつある一方で、海外の日本人学校に配置されているSCは僅かである。With Kidsでは、臨床心理士としての各々の経験を活かした無償ボランティアによって、海外に住む日本人の子どもたちと関係者を支援している。
一方で、ボランティア活動には継続させる難しさが存在する。これまでの活動の中では、メンバー自身の生活に変化もあり、新たなメンバーが加わったり、あるいは活動から離れるメンバーもいた。
そのような中でも、今、我々はなぜWith Kidsの活動に参加し続けているのか。臨床心理士が自己を振り返り、活動から得ていることを自覚することによって、枠組みが曖昧になりやすいボランティア活動を行う上で、自身の立ち位置やボランティアの限界について整理する機会としたい。メンバーが互いの思いを知ることは、臨床心理士として仕事の継続が難しい海外において互いにロールモデルとなり、支え合う力にもつながり得るものと考える。
話題提供
本シンポジウムでは、With Kidsが発足した経緯と活動概要を振り返った上で、活動から離れた者を含めメンバーへのアンケート結果を報告する。国内外のメンバーから、各々の思い入れや自身のキャリアとの関係等を話題提供する。指定討論では、在外邦人支援に造詣の深い井上孝代先生を招き、議論を深めたい。海外での支援や、臨床心理士のボランティア活動に関心のある方々にとって、何らかの指針やヒントが得られる機会になることを願っている。
もくじ
Ⅰ.With Kids とは
Ⅱ.メンバーからの報告
- With Kidsの誕生、そして活動
- 海外在住者の入会動機
- メールを介した活動
- 無償ボランティアとその他の活動との兼合い
- 休会経験者の声
- ボランティア活動という枠組み
- メンバーが活動から得ていること
Ⅲ.指定討論者から (井上孝代先生)